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札内川河畔林  フィールド&実験室・メニューに戻る
札内川中流域では砂礫堆や河岸段丘が発達し,ケショウヤナギを中心とした広葉樹林が広がる。
粗い礫質成分が卓越する立地に生育するケショウヤナギ稚樹。

 北海道十勝地方南部を流れる札内川は十勝川水系の主要河川で,その流域にはケショウヤナギ(Chosenia arbutifolia)の群生地が見られる。ケショウヤナギは,日本では北海道と長野県上高地にのみ分布する隔離分布種であり,流路変動がしばしば発生する網状流路河川の礫質土壌に優占する。

 石礫がゴロゴロする,一見,植物の生育にとっては不都合に見える立地にケショウヤナギはなぜ優占するのだろう。

 札内川のヤナギ科群落に関する研究は,その分布と成育立地の土性との関連性(新山,1989)や,特にケショウヤナギに注目した発達段階毎の群落構造に関する検討(Ishikawa,1987)はあるが,生理学的あるいは生態学的な特質が十分には整理されていない。

 例えば,ケショウヤナギは他のヤナギ科木本に比べて直根性が著しく(Sugaya,1961),乾燥の卓越する砂礫堆で地下水を有効利用するためだと推察されているが(Ishikawa,1987;新山,1989),未だ十分には検証されていない。

 一方,札内川では大規模な多目的ダムである札内川ダムの運用が1998年より始まった。このダムの最大放流量は150m3/sと計画されており,ダム建設以前はおよそ2年に1度の頻度で発生した200m3/s規模の洪水も発生しなくなる可能性が高い。

 河畔林の構造や種組成は洪水などの河床攪乱により破壊・形成される立地環境と密接に対応している。したがって,ダムにより流量調節が行われると洪水攪乱様式や地下水文動態等が変化し,ひいては河畔林の更新動態に影響が及ぶものと考えられる。
掘り出してみたケショウヤナギ稚樹の根系。苗高20cmほどの個体だが,根はまっすぐに伸び,長さは苗高の3倍もある。 樹高2〜3mの幼樹の幹枝は,しばしば白粉で「お化粧」する。
 写真に見られるようなケショウヤナギ群落は,今後どのようにその姿を変えていくのだろうか。その場合,立地環境条件が,どのように変化したことに対応したのだろうか。これらを明らかにしていくためには中〜長期的な調査が必要となるが,まず,その足がかりとして,現在,地下水文動態の観測を始めた段階である。
隣接流域である歴舟川での洪水。河畔林はさまざまなスケールで破壊と再生を繰り返す。


研究ノート)に関連論文の要旨があります

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